ピロリ菌、除菌したはずなのに「またうつった」って本当?

白衣の男性医師が患者に説明をしている 消化器内科

「ピロリ菌を除菌したのに、また陽性と言われた」
「一度治っても、また誰かからうつることってあるの?」

外来でもよく聞かれるこの質問。
結論から言うと、再感染は非常にまれで、実際には「除菌がうまくいっていなかった」「検査のタイミングが早すぎた」など、再感染と見せかけた“別の理由”が多いです。

ピロリ菌の検査・除菌・その後についてまとめて知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。

ピロリ菌がいるかもしれません…と言われたあなたへ
健診でピロリ菌を指摘された方へ。検査の種類、除菌治療、胃カメラの必要性、除菌後のフォローアップまで医師が丁寧に解説します。

除菌後の再感染は、ほとんど起こらない

ピロリ菌の再感染率は、年間1%未満といわれています。
一度除菌に成功すれば、基本的には再感染のリスクは非常に低いと考えてよいでしょう。

そもそも、ピロリ菌は胃の粘膜に長期間住みつく性質があり、一過性でうつって治るような菌ではありません。


本当に再感染?実は除菌に失敗していたパターンも

除菌後に「また陽性」と言われた場合、次の2つがよくあるパターンです。

  • 除菌が成功していなかった(初回除菌の失敗)
  • 除菌判定のタイミングが早すぎて“偽陰性”になっていた

特に判定検査を、抗生剤終了後すぐに行ってしまうと、「いったん菌が減って陰性になったように見えて、実は生き残っていた」というケースがあります。
これを「再感染」と誤解してしまうことも少なくありません。


子どもや家族からうつる?家庭内感染の可能性

ピロリ菌の感染時期は、主に乳幼児期の家族内感染と考えられています。
親から子への「口移し」が感染経路として疑われていますが、確実な経路は特定されていません。

ただし、大人同士の感染はまれで、除菌に成功した大人が、他の家族からうつることはまずないとされています。


再感染を必要以上に心配しないで大丈夫

一度きちんと除菌し、その後の判定検査でも陰性が確認できていれば、再感染を過度に心配する必要はありません。

日常生活の中で特別な予防策を取る必要もなく、普通に食事をして、旅行をして、生活を送って構いません。

それよりも大切なのは、除菌後の胃カメラフォローを忘れずに受けること。
ピロリ菌がいなくなっても、胃がんのリスクがゼロになるわけではありませんので、定期的なチェックをおすすめします。


よくある質問

Q.ピロリ菌の検査は何回も行った方が良いのですか?
A.医師からの指示がない限り、通常は一度で十分です。

ピロリ菌は、幼少期に衛生環境が整っていない状態(例:井戸水の摂取など)で感染すると考えられています。現在の日本では衛生環境が改善されており、新たにピロリ菌に感染する確率は1%未満とされています。

そのため、一度の検査でピロリ菌が「いない」と診断された方が、後から新たに感染する可能性は非常に低く、原則として再検査の必要はありません。今後、胃カメラ検査の中で医師が新たな感染を疑った場合のみ、再検査が提案されますので、その際に受けていただければ十分です。

除菌治療を受けた方も同様です。再感染が疑われる場合に限って再検査を検討すれば問題ありません。

なお、人間ドックなどで行われる血液や尿によるピロリ菌抗体検査は、除菌歴のある方では除菌後も陽性になることがあります。これは、除菌によって抗体の量は減少しますが、基準値を超えるレベルで残存している場合があるためです。

医師が胃カメラで再感染を疑わない限り、治療の必要はありません。抗体検査は、除菌歴のない方の初回スクリーニングとして有効なものであり、繰り返し受ける必要はありません。

【まとめ】

  • ピロリ菌の再感染は非常にまれ(1%未満)
  • 再陽性の多くは、除菌失敗や早すぎる判定が原因
  • 家族からうつる可能性も大人同士ではほぼ心配なし
  • 除菌後は再感染よりも胃カメラフォローが大切!

ピロリ菌の検査方法や除菌の進め方、再感染の不安まで詳しく知りたい方はこちらをご覧ください

ピロリ菌がいるかもしれません…と言われたあなたへ
健診でピロリ菌を指摘された方へ。検査の種類、除菌治療、胃カメラの必要性、除菌後のフォローアップまで医師が丁寧に解説します。

※本記事は、一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。
健康上のご不安がある場合は、必ず医師の診察を受けてください。

参考文献

  • 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会(編).
    H. pylori感染の診断と治療のガイドライン 2024改訂版. 先端医学社, 2024.
  • 日本ヘリコバクター学会ガイドライン作成委員会(編).
    H. pylori感染の診断と治療のガイドライン 2016改訂版. 先端医学社, 2016.

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