こんにちは、気ままな勤務医です。
喉の奥にずっと何かが引っかかっている感じ、経験したことありますか?
私も1度だけですが、数か月間悩んだことがあります。
食事は問題なく食べられるけど、ずっと違和感があって喉が苦しい…。
えへんって咳払いをしても、全くとれない…。
耳鼻科で診てもらっても異常なし、胃カメラでも逆流性食道炎は見つからない。
それでも続くこの違和感、一体何なんでしょう?
もしかすると、それは「咽喉頭異常感症(ヒステリー球)」かもしれません。
喉に何かが詰まっているような感覚があるのに、検査をしても特に異常が見つからないという状態です。
異常がない=病気ではない、と思われがちですが、感じている違和感は確かに“ある”ものなんです。
「咽喉頭異常感症」って何?
咽喉頭異常感症とは、喉やその周辺に異物感や圧迫感があるのに、明確な病気が見つからない状態のことです。
特に30〜50代の女性に多いとされ、ストレスや疲労、自律神経の乱れなどが関係していると考えられています。
漢方では「梅核気(ばいかくき)」とも呼ばれており、まさに“梅の種が喉に引っかかっているような感じ”を表現した言葉。
(私も今回調べて初めて知りました…!)
咽喉頭異常感症と診断する前にチェックしておきたい病気
この症状が咽喉頭異常感症かどうかを判断するには、まず以下のような他の病気が隠れていないかをチェックすることが大切です。
・食道癌や咽頭癌などの腫瘍性疾患
頻度は低いですが、声のかすれ、飲み込みにくさ、体重減少などがあれば注意が必要です。
・逆流性食道炎
胃酸が喉まで逆流して、炎症や違和感を引き起こします。胸やけや胃のムカムカ感を伴うことが多く、最もよくある原因の一つです。
逆流性食道炎については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 【専門医がやさしく解説】逆流性食道炎とは?症状・治療・日常生活のポイント
・副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎(後鼻漏)
鼻水が前ではなく、鼻の後ろ側を通って喉に流れ込むことで、ずっと痰が絡んだような感じが続きます。
・咳喘息・COPD(慢性閉塞性肺疾患)
咳が主な症状ですが、喉の違和感やイガイガ感を伴うこともあります。
・甲状腺の腫れやしこり
喉の前にある甲状腺が腫れることで、物理的に圧迫感を感じるケースがあります。
これらの病気の場合は、大元の治療を行わなければ改善しません。
これらが否定できた上で、はじめて咽喉頭異常感症という診断が考えられます。
西洋医学的な治療はない?
咽喉頭異常感症に対して、西洋医学では「これを飲めば治る!」という特効薬は残念ながらありません。
西洋医学は、炎症や腫瘍など明確な原因がある病気を治療するのが得意な一方で、異常が“ない”状態に対しては治療が難しいことも多いのです。
抗不安薬などの精神系の薬を使うこともありますが、副作用などを考えると、かなり限られたケースに留まるのが実情です。
ただし、咽喉頭異常感症は時間の経過とともに自然に軽くなる方も多くいらっしゃいます。
「検査を受けて異常がなかった」という事実が、患者さん自身にとって大きな安心感につながり、それだけで症状がやわらぐことも少なくありません。
漢方の「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」が有効なことも
そんな中、効果が得られやすいのが漢方薬の「半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)」です。
この薬は、喉の詰まり感や不安感などを改善するとされ、「気の流れが滞っている状態(=気滞)」を改善する効果が期待されています。
たとえば、こんな方に適していると言われています。
・ストレスや緊張が強く、喉の詰まり感や胃の症状が気になる
・不安感や落ち込み、動悸を感じやすい
・喉がいつも気になって仕方がない
即効性はあまりありませんが、数週間飲み続けることで「楽になった」と感じる方も多い印象です。
もちろん体質や症状によって合う・合わないがありますので、気になる方は医師に相談してみてくださいね。
最後に
検査で「異常はない」と言われても、喉の違和感が続くとつらいものですよね。
「気のせい」なんて片付けられてしまうと、余計にしんどくなってしまいます。
「異常なし=問題なし」ではなく、「安心して経過を見ていける状態」と捉えてていただければと思います。
咽喉頭異常感症は決して珍しい病気ではありません。
しっかり診察を受けて、深刻な病気でないとわかるだけでも大きな一歩です。
あとはストレスとうまく付き合いながら、自分のペースでケアしていくことが大切です。
何か気になることがあれば、どうぞ気軽に受診してくださいね。
逆流性食道炎については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 【専門医がやさしく解説】逆流性食道炎とは?症状・治療・日常生活のポイント
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