【専門医が解説】脂肪肝と言われたあなたへ──最初に知っておきたい5つのこと

白衣の医師が肝臓の解説をしている写真 消化器内科

「人間ドックで脂肪肝を指摘されたけど、経過観察でした。何か気をつけることあります?」

「脂肪肝って生活習慣病ですよね?運動して痩せるしかないですか?」

みなさんこんにちは。気ままな勤務医です。
今回は皆が悩む「脂肪肝」の解説記事です。

外来でも、みなさんからの質問が非常に多いですね。
そして、我々医師にとっても治療が難しい病気でもあります。

何を隠そう、この私も…

今日は脂肪肝の概要がこれ1つでわかるようにまとめてみました。
ぜひ一読のうえ、みんなで脱・脂肪肝!を目指していきましょう。

※お忙しい方は、記事の最後に「まとめ(5つのポイント)」がありますので、そこだけでもぜひ読んでみてください!


脂肪肝って、どんな病気?

脂肪肝は、余分な脂肪が肝臓にたまり、肝臓の機能が落ちたり、炎症や線維化(硬くなる変化)を引き起こす状態です。
主に以下の2つに分けて考えます。

  • アルコール多飲による アルコール性脂肪肝
  • お酒をあまり飲まない人に起こる 非アルコール性脂肪肝

今回は、このうち非アルコール性脂肪肝を中心にお話します。


非アルコール性脂肪肝はどれくらい多いの?

  • 日本では成人男性の 30〜40%、女性では 10〜20%
  • 男性の方が圧倒的に多いですが、女性でも 加齢や閉経によるエストロゲン低下により、年齢が上がると増加します

▼ BMIと脂肪肝の関係

BMIが高いほど、脂肪肝のリスクは上がります。

  • BMI 23未満:10.5%
  • BMI 23〜25:37.9%
  • BMI 25〜28:58.4%
  • BMI 28〜30:84.2%
  • BMI 30以上:89.1%

放っておくとどうなる?脂肪肝の進行とは

脂肪肝が進行すると、肝臓が硬くなる「線維化」が進み、やがて 肝硬変 に至るリスクがあります。
肝硬変になると、以下のようなリスクが高まります。

  • 肝臓がんの発症
  • 命にかかわる合併症(腹水、食道静脈瘤、感染性になりやすいなど)
  • 寿命の短縮

さらに、最近の研究では、脂肪肝が次のような病気と関連していることもわかってきました。

  • 大腸がん、乳がん
  • 心筋梗塞、脳卒中 などの血管系の疾患

いずれも、命にかかわったり、活動度が著しく低下する可能性がある怖い病気です。


アルコール性脂肪肝って、どれくらい飲むと該当するの?

脂肪肝には「お酒の飲みすぎ」が原因のタイプもあります。
以下の量を毎日飲んでいる方は、アルコール性脂肪肝と判断されることがあります。

▼ アルコール摂取量の目安(エタノール換算)

  • 男性:30g以上 / 日
  • 女性:20g以上 / 日

▼ 具体的にはこのくらいで20g相当

  • ビール(5%)中瓶1本(500ml)
  • 日本酒(15%)1合(180ml)
  • 焼酎(25%)0.6合(約110ml)
  • ウイスキー(40%)ダブル1杯(60ml)
  • ワイン(12%)グラス2杯弱(200ml)

女性であれば上記の量、男性であれば ビール中瓶1.5本以上 を毎日飲むと該当します。
余裕ですね……笑


脂肪肝かどうかは、どう調べる?

脂肪肝を疑ったら、まずは以下のような検査を行います。

  • 問診・採血
     → 肝炎ウイルス、自己免疫性肝炎、薬剤性肝炎など他の病気を除外
  • 生活習慣病のチェック
     → 脂肪肝の方は高血圧、糖尿病、脂質異常症、高尿酸血症などの合併が多いです
  • 腹部エコー(超音波検査)
     → 肝臓がキラキラ白く見えることが多く、線維化の進行があれば凹凸や粗造さが見られます

こうした情報を総合的に判断して「脂肪肝かどうか」を診断します。

肝臓の数値が高めだった方や、「肝機能異常」と言われて不安になった方は、
こちらの記事もあわせてご覧ください。

👉 「肝機能障害」と言われたあなたへ〜健診後、まず知っておいてほしいこと〜


「脂肪肝です」と言われたら、何をすればいい?


【食生活を見直しましょう】

まずは、1日の摂取カロリーの目標を決めましょう。
一般的には 標準体重 × 30kcal/日 が目安です。

この「標準体重」は、以下の計算式で出せます。

標準体重(kg)=身長(m)× 身長(m)× 22

▼ 例:

  • 身長160cm → 標準体重:約56kg → 摂取カロリー:約1680kcal/日
  • 身長170cm → 標準体重:約63.5kg → 摂取カロリー:約1900kcal/日

※運動量や代謝は人によって異なるため、あくまで目安です。

栄養バランスの目安

  • 炭水化物:全体の 50~60%
  • 脂質:20~25%(飽和脂肪酸は控えめに)

最近は、無料のアプリなどでもカロリー計算や栄養バランスの評価ができるものが増えています。
まずは今の自分の食事を「見える化」することから始めましょう。


【運動習慣を見直しましょう】

肥満(BMI>25)の方は、体重の7%減量を目指すと脂肪肝の改善が期待できます。

有酸素運動(ウォーキング・ジョギングなど)

  • 1回30~60分、週3~4回
  • 4〜12週間継続すると、体重が減らなくても改善効果あり

レジスタンス運動(筋トレや体幹トレ)

  • 腹筋・スクワット・プランクなど
  • 消費カロリーは少なめですが、脂肪肝にも有効とされています
  • 自宅でできる運動でもOK。まずは10回1セットから!

忙しい方でも、できる工夫を

  • 駅の1つ手前で降りて歩く
  • エレベーターを階段に変える
  • お風呂前にお子さんと遊びながら体幹トレーニング

どんなトレーニングでも、短時間でも全然構いません。
まずはできることから少しずつ始めて、継続していきましょう。


脂肪肝に効く薬はあるの?

現時点で、脂肪肝に特化した特効薬はまだありません。
ビタミンE製剤が使われることもありますが、著効するわけではありません。

ただし、以下のような生活習慣病がある場合は、その治療が脂肪肝の改善にもつながります。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 高尿酸血症

ご年齢や合併症の有無、検査結果などにより使用する薬剤は変わります。
かかりつけの先生に相談をしてくださいね。


お酒が原因の脂肪肝は、どう対策する?

アルコール性脂肪肝と診断された方は、次のような対策が必要です。

  • 飲酒量を減らす
  • 週に何日かの休肝日をつくる
  • 肝硬変まで進行している場合は禁酒が必要

まとめ

  • 脂肪肝は放置すると、肝硬変に至り発がんリスクや合併症リスクが高くなる。
  • 食事内容の見直しを。まずはご自身の目標カロリーを計算してみましょう。
  • 肥満がある方は7%を目安に減量を。
  • 運動は有酸素運動にこだわらず、できることから少しずつ。
  • 生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症、高尿酸血症)がある方は、そちらの治療も重要。

自覚症状がないため、なかなか取り組みづらい脂肪肝。
でも、この記事を読んで「これならできそう」と思ってもらえたら嬉しいです。

私も診療の合間にこっそり筋トレ中です。
一緒に少しずつ、脱・脂肪肝を目指していきましょう!


※本記事は、一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。
健康上のご不安がある場合は、必ず医師の診察を受けてください。


参考文献:
・日本消化器病学会・肝臓学会(編). NAFLD/NASH診療ガイドライン2020改訂第2版. 南江堂, 2020
・日本肝臓学会(編). NASH・NAFLDの診療ガイド2021. 文光堂, 2021

コメント

タイトルとURLをコピーしました