こんにちは、気ままな勤務医です。
今日は「便潜血検査」のお話をします。健診や人間ドックで40歳を過ぎると、ほぼ必ず入ってくる項目ですよね。
「え、あの“うんち2回取るやつ”か…正直めんどくさいんだよね」
「私、痔があるから毎回陽性。でも変わらないから放置してる〜」
……わかります、めちゃくちゃわかります。私も自分の検便を出すのはできれば避けたい派です(笑)
でも消化器内科医として日々胃カメラ・大腸カメラを担当している立場から言わせてください。
便潜血検査、実は命を守る検査なんです。
この記事では、便潜血陽性と診断された方が知っておくべき5つの重要ポイントについて、専門医の視点からわかりやすく解説します!
目次
① 便潜血検査ってどんな検査?
便潜血検査では、目に見えない“便の中の血”の成分を調べています。
健診でこれが「陽性」となる人は、全体の3〜6%程度。けっこう多い印象ですよね。
陽性になる原因としては、
- 便が硬くて肛門が切れた
- 痔(特に出血するタイプ)
- 生理中の女性
こうした良性の原因でも反応が出ることがあります。
でも、重要なのは——
この検査で、一定の割合の大腸がんを“無症状のうちに”拾えているという事実です。
陽性者のうち、約2〜5%で実際に大腸がんが見つかるとされており、これが便潜血検査が健診項目に入っている大きな理由です。
② なぜ2回も便を取るの?
「1回じゃダメなの?」とよく聞かれますが、2回法には理由があります。
- 1回検査だと、がんの検出率は50〜60%程度
- 2回検査にすると、70〜80%までアップ
1日だけでは出血のタイミングを逃してしまう可能性があるため、2日分で見逃しを減らす仕組みなんです。
ちなみに3回以上にしても検出率は上がりますが、そのぶん偽陽性(がんではないのに陽性になる)が増えてしまうため、精度と効率のバランスが良い「2回法」が主流になっています。
③ 陽性になったらどうする?
便潜血検査は、2回中1回でも陽性なら要精密検査です。
次のステップは、みなさんご存じの**大腸カメラ(内視鏡検査)**になります。
「1回だけだし、放っておいても平気じゃない?」
「もう1回便潜血をやって、陰性ならカメラやらなくていい?」
——気持ちはめちゃくちゃわかります。でも…
1回でも陽性=何らかの出血があったというサインです。
追加で便潜血をして陰性になったとしても、“陽性だった事実”は消えません。
怖い・面倒・恥ずかしい…
いろんなハードルはあるけれど、大腸がんを早期で見つけられるチャンスを逃さないでください。
④ がん以外でも陽性になるの?
はい、がん以外にも以下のような病気で陽性になることがあります。
- 進行・早期の大腸がん
- 潰瘍性大腸炎やクローン病(炎症性腸疾患)
- 大き目のポリープ
- 痔
特に若年層では、潰瘍性大腸炎(難病)が便潜血をきっかけに見つかることがあります。
この病気は、長期にわたる炎症が続くと大腸がんリスクも上がるため、早期の診断と適切な管理が大切です。
⑤ 去年カメラやったけど、今年も陽性…また受けるべき?
これもよく聞かれる質問です。
結論からいうと、基本は「陽性になったら毎回精密検査を受ける」が原則です。
理由は、
- 大腸カメラにも見落としがある(5mm以下のポリープは20〜30%見逃される)
- 腸の形やひだの裏に隠れて見えづらい部分がある
- 前処置(下剤)がうまくできていないと視野が悪くなる
- 検査から1年の間に新たに病気ができている可能性がある
実際、海外では**大腸カメラ後3年以内に大腸がんが見つかるケースが約3〜9%**報告されています。
つまり、大腸カメラは決して完璧な検査ではなく、繰り返し検査を受けることで安全性を高めるという考え方が大切なんです。
おわりに
「たかが検便、されど検便」。
便潜血検査はちょっと面倒だけど、**“無症状のがんを早期に見つけるためのサインキャッチャー”**として、非常に重要な役割を果たしています。
もし陽性と出たら、こわがらず、でも甘く見ずに、ぜひ大腸カメラへ。
自分の命を守るために、できることから一歩ずついきましょう。
※本記事は、一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。
健康上のご不安がある場合は、必ず医師の診察を受けてください。
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