【医師が解説】健診で「胆嚢に異常あり」と言われたら?放置NG・受診の目安をわかりやすく解説

健診結果の中で腹部超音波検査の項目を指し示す写真 健康診断・人間ドック

目次

「胆嚢になにかある」と言われて不安な方へ

健診結果にこう書かれていたこと、ありませんか?

  • 胆嚢にポリープを認めます
  • 胆石を認めます
  • 胆嚢腺筋腫症を認めます

いずれも「胆嚢に何かある」という所見で、普段自覚症状がないだけに、

「このまま放っておいていいの?」
「がんじゃないの?」

と、不安になってしまう方も多いのではないでしょうか。

胆嚢ってどんな臓器?

まずは胆嚢の大まかな役割を簡単に解説します。

胆嚢は、肝臓で作られた「胆汁(たんじゅう)」という消化液を貯蔵・濃縮する臓器です。
食事を摂った際に、胆嚢から胆汁が腸へ流れることで、腸での脂肪の消化を助けるという大事な働きをしています。

場所としては、右の肋骨の一番下あたりに位置しています。

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胆嚢ポリープ:「大きさ」と「形」で方針が分かれます

胆嚢ポリープは、胆嚢の壁に発生した突起物(隆起性病変)であり、大部分は良性でがん化することはありません。
健診患者さんの5~10%で認められます。

健診で見つかる胆嚢ポリープの中で最も多いのが、「コレステロールポリープ」と呼ばれるもので、全ポリープの約90%を占めます。
これは胆汁中のコレステロールが胆嚢の粘膜に付着したものであり、近年の食生活の欧米化により増えているとされています。

大きさは数ミリ程度のことがほとんどで、10mmを超えることはまれです。
腹部エコーでは、いくつかのツブツブとして観察されます。

胆嚢ポリープの他の種類には、腺腫、過形成性ポリープ、炎症性ポリープなどがあります。
いずれも自覚症状を出すことは少なく、健診で偶然見つかることが多いです。

ポリープかどうかは、エコー検査での形・数・大きさ・動き方などから総合的に判断されますが、はっきり見分けられない場合もあるため、定期的な経過観察でサイズや形の変化を見ていくのが一般的です。

大きさ 対応
5mm未満 良性の可能性が極めて高く、年1回の腹部エコーで経過観察。
(※最新の胆道癌診療ガイドライン第3版ではフォローアップ不要とされていますが、慣例として年1回程度のフォローが多いです。)
5〜9mm 初回指摘後、3か月〜半年以内にフォロー。以後、年1回程度の定期観察。
増大傾向や「広基性(幅広い付着)」の場合は精密検査を推奨。
10mm以上 胆嚢癌との鑑別が必要となり、精査(EUS[超音波内視鏡検査]、CT、MRIなど)を行います。 場合によっては手術も検討。

10mm未満で、特に症状がない場合は、定期的な腹部エコーでの経過観察となります。
「ポリープ」=「がん」ではありません。
定期的な画像フォローで冷静に見守ることが大切です。

胆石:無症状なら多くは“経過観察”です

胆石とは、胆嚢内に石ができた状態のこと。
日本人の10%程度に認められ、健診で偶然見つかることも少なくありません。

リスク因子としては、

  • 脂っこい食事
  • 肥満
  • 女性
  • 妊娠・出産歴
    などが挙げられます。

基本的に、無症状の胆石は治療(手術)不要であり、年1回程度の腹部エコーで経過観察します。

【注意が必要な症状】

  • 食後の右上腹部の痛み(特に脂っこいものを食べたあと)
  • 発熱や嘔吐を伴う痛み(胆嚢炎・胆管炎の可能性)
  • 黄疸(胆道閉塞を伴う可能性)

こうした症状が出た場合は、胆石が悪さをし、胆石発作や胆嚢炎、胆管炎を引き起こしている可能性が高いです。
命に関わることがあるため、速やかに医療機関を受診してください。
場合によっては緊急で腹部手術や内視鏡治療が行われる可能性があります。

また、胆石と胆嚢癌の関連性は明確ではありませんが、

  • 3cm以上の巨大結石
  • 胆嚢ポリープ10mm以上
  • 胆嚢壁の肥厚
  • 充満結石

などではリスクが上がるとされており、経過観察や手術の検討対象になります。

胆嚢腺筋腫症:無症状であれば”経過観察”です

胆嚢腺筋腫症とは、胆嚢壁が部分的に厚くなる良性病変のことです。
胆嚢壁内に小さな嚢胞(くぼみ)ができるのが特徴で、エコーやMRIで診断されます。

基本的に、無症状であれば経過観察のみで問題ありません。

ただし、

・胆のう癌との区別が難しい場合

・局所的な壁肥厚が強い場合
には、より詳しい評価が必要なこともあります。

まとめ:放っておいていいの?受診の目安は?

胆嚢ポリープ・胆石・胆嚢腺筋腫症。
いずれも健診でよく見つかる所見ですが、多くの場合は経過観察で十分です。

とはいえ、

  • 症状がある(腹痛・発熱・嘔吐・黄疸など)
  • ポリープが10mm以上ある
  • 限局性の壁肥厚や複数の異常がある

といった場合には、消化器内科または消化器外科への受診をおすすめします。

「様子を見てよかったのかな…」と後から不安に思わないためにも、
気になる方は一度、専門医に相談してみてくださいね。

※本記事は、一般的な情報提供を目的としており、個別の診断・治療を行うものではありません。
健康上のご不安がある場合は、必ず医師の診察を受けてください。

【参考文献】

  • 日本肝胆膵外科学会, 胆道癌診療ガイドライン, 改訂第3版, 医学図書出版, 2019年
  • 日本胆道学会, 「胆のうポリープ・胆のう腺筋腫症」Webページ

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